建設業の違法派遣にご注意!派遣と請負の区別基準
「複数の建設業者で協力して、それぞれが従業員を工事現場に赴かせる」「他社の要請に応じて、従業員を工事の手伝いに行かせる」建設業者にとってよくあることだと思いますが、もしかすると違法な派遣行為を行っているケースがあるかも……。
建設業の許可を受けている業者もそうでない業者も、大規模工事も軽微な工事も同じ基準で判断されますので、建設業を営む者すべてに関係します。
知らぬ間に違法行為を行わないように、建設業の派遣・ヘルプにおける適法・違法の区別基準の解説をします。
目次
従業員を他者の要請に応じて現場で働かせる場合、(1)労働者供給(2)労働者派遣(3)請負の3パターンが考えられます。
そして、労働者派遣法4条1項には「建設業務(土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又 はこれらの準備の作業に係る業務をいう。)…について、労働者派遣事業を行ってはならない」と規定されています。
結論から言うと、他の事業者に建設工事の作業(及び準備)を行わせる場合、(3)請負のみが適法です。
(1)労働者供給(2)労働者派遣(以下、両者合わせて「労働供給」と呼びます)は違法行為であり、行うことができません。
仮に契約書の名目が「請負契約」でも実質が「労働供給」に当たる場合は、偽装請負であり、違法な労働供給と判断されることになります。
つまり、労働供給・偽装請負に当たるか、請負なのかが適法・違法の分岐点となるので、その違いに絞って解説します。
「請負」も「労働供給」も、自分が使用する従業員等を他者の下で労働させる点では同じですが、その誰が労働の指揮命令を行っているか、誰の指揮・管理に基づいて労働しているかが、最大の違いです。
現場において、自らの責任において、従業員に対して、業務遂行に関する指示や管理をする場合には請負に当たり、他人(注文主や他の会社)が指揮命令をする場合は「労働供給」となります。後者の場合は、請負契約の形式で行われていたとしても、偽装請負として違法となります。
より具体的には、
これらすべての要件を満たす場合が請負(適法)であるとされています。これらを満たさない場合は雇用あるいは労働供給と判断されます。
形式的・機械的に判断されるのではなく、契約条件や専属度、収入額などに応じて総合的に考慮して判断するものと考えられます。
違法な労働供給ではなく、適法な請負であると判断されるための原則は、「自分(自社)の従業員は、他人任せにせず、自分(自社)で指揮・管理する」ということです。
ただし、請負業務の処理に間接的に必要となるもの(駐車料や休憩場所の使用料、光熱費、更衣室の提供など)は請負契約の内容に含むものして、別途契約を結ばなくても問題ありません。
建設業については、発注者・元請業者から下請の労働者に直接指示をしたり、労働時間を管理することは原則として違法ですが、建設業ではない業務や合理的な理由がある場合には適法とされます。
違法な労働供給(偽装請負)をしてしまった場合、それを行った者は刑罰や営業停止・許可取消処分を受けるおそれがあります。
建設業者が建設業について労働者供給や派遣を行った場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(派遣:労働者派遣法59条1号、労働供給:職業安定法64条9号)。
また、建設業以外の業務(事務処理や施工管理等)につき無許可で派遣をした場合も、同様に1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(労働者派遣法59条2号)。
法人(会社など)の代表者や代理人・使用人、個人事業主の代理人・使用人が上記の違法行為を行った場合は、法人や個人事業主にも100万円以下の罰金が科されます(労働者派遣法62条)。
建設業者が上記の刑罰を科されると(懲役でも罰金のみでも執行猶予付きでも)建設業許可の欠格要件に該当するので、許可を取り消されます(建設業法8条1項7~8号・11~12号、同29条2項、建設業法施行令3条の2)。
また、不起訴処分など刑罰を科されない場合であっても、管轄行政庁から指示・営業停止の処分が下されるおそれがあり(建設業法28条)、特に情状が重いと判断されると営業停止を経ずに許可取消しを受ける可能性もあります(建設業法29条1項6号)。
さらに、刑罰を受けたり、許可を取り消された日から5年間は再び許可を得ることができません(建設業法8条2号)。
仮に刑罰や許可取消しの処分を受けなかったとしても、法令違反の事実は残りますから信頼が損なわれます。